(個人事業から会社設立を検討している方向けの記事をシリーズにしています)
【個人事業から会社設立を検討している方向け】①会社にするってどういうことだろう?
【個人事業から会社設立を検討している方向け】②会社設立の目的を考える~よくある3つの目的と、会社の形を決めるもう一つの大切な視点。
【個人事業から会社設立を検討している方向け】③会社と法人、どちらを選ぶ?
前回の記事の最後では、「どんな会社を作りたいですか?」と最後に投げかけました。
私は、「会社を作る目的」「どんな会社にしたいかという想い」が重要だと思っています。
ですので、会社を作る際に感じるメリットだけではなく、創業される方の想いがあることが大切です。
一昔前に比べて、会社は作りやすくなっています。
けれど事業するのに、必ずしも会社という形態でなければいけないということもありません。
資本金は1円でいいし、昔のように株主を7人集める必要もない。
だれでも会社が簡単に作れるようになったので、会社にすれば自動的に信用もついてくる、なんてこともありません。
「会社を設立して、どのように事業をしていきたいのか?」
ここが一番重要です。
日本一のお金持ちと言われている「斎藤一人さん」は個人事業主だったりします。
そこにも事業に対する想いがあり、法人ではなくてもその想いが伝わっているからこそ、たくさんのファンがいるのだと思います。
官公庁の許認可の際に会社設立が必要条件となる事業もありますが、多くの場合、会社設立はあなたの事業にとってのツール、選択肢の一つです。
とはいうものの、やっぱり法人にしたい!とお考えの方もおられるかと思います。
ここでは個人事業から会社設立をする目的、きっかけとして実際に多い3つをご紹介しますね。
①節税
②許認可
③取引先の都合(信用)
順番に説明していきますね。
(なお、もちろんここに挙げたものがすべてではありません)
節税目的の会社設立なら、税理士さんが心強い味方になってくれます
まず①の節税について。
誰でもやっぱり気になるのは、税金のことですね。
「経費が多く計上できるんでしょ」
「どれだけ売り上げたら会社にすると節税メリットが受けられる?」
「従業員の社会保険料が負担になるって聞いたけど」
「会社に利益がでなくても払う税金があるんでしょ?」
個人所得がある方にとって、税金問題はかなり大きいのです。
そして、実際に節税目的で会社設立をする方はとても多いです。
恵事務所は税理士のように税金の試算はできませんので、具体的な試算は税金のプロである税理士さんにお願いしています。
節税目的の会社設立のご依頼は、税理士さんのご紹介がほとんどです。
顧問税理士さんは、個人事業の時からお客様の事業をよく見ておられるので、設立後も心強い味方になってくださいます。
「節税のため」に会社設立をご検討されている方には、税理士さんにご相談いただくことをお勧めしています。
会社設立が、各種許認可の絶対条件の場合があります
次に、②の許認可目的です。
事業の中には、官公庁の許認可を必要とするものがあり、さらに、会社などの法人格があることが必要となる場合があります。
例えば建設業、介護事業、運送業、労働者派遣業などです。
これらの事業の許認可を受ける際に法人格が求められる場合は、会社・法人設立が必須となります。
ただ、それ以外に実質的な要件もありますので、具体的な手続きについては別途検討が必要です。
「会社でないと取引しません」
最後に、③取引先の都合(信用)についてです。
個人事業主とは契約しないと取引先にいわれて、会社設立をされる方も見えます。
ただ、一昔前に比べて会社はだれでも簡単に作れるようになりましたので、「会社でないと取引しません」と言われることは少なくなりました。
1000万円の資本金を用意しないと株式会社を作れなかった時代では、
「株式会社を設立した」=「資本金1000万円を用意できた」
ということになります。
金銭的な信用の裏付けがあります。
もっと前は、株主を7名集めなければいけなかった時代もあります。
当然、取締役3名以上、監査役1名以上。
そうすると今度は、
「株式会社を設立した」=「役員が3名以上、株主は7名以上いる」
ということです。
こちらは人的信用ですね。
株式会社という形態をとっていること自体が、信用を裏付けることに直結していた時代は、確かにあります。
その時代には、個人事業者とは取引しない、会社になったら契約しましょう、という論理が成り立ちました。
だけど今はどうでしょうか。
資本金は1円でいい。
株主=社長1人でもいい。
そうなると、株式会社という形態をとっているだけで信用されるわけではないというのがお分かりいただけるはずです。
反対に、個人だから信用できない、という結論にもなりません。
個人事業主で活躍されている事業者さんも多いです。
ただ、人は亡くなったらいなくなるけれど、社長や株主が亡くなっても会社はなくならないため、取引の継続性、安定的な契約関係を重視して取引先が会社設立を求めることもあるかもしれません。
だけど、一人株主=一人社長の株式会社なら、やっぱり社長がいなくなることはその会社自体が機能しなくなることを意味しています。
これからは「組織」ではなく「個」の時代だともいわれています。
会社だから信用して取引をしよう、ということはますます少なくなると思っています。
けれど、一般的にはこれがわかりにくいですね。
例えば不動産屋さん。
お客様は一般の方が多いので、
「大切な不動産を任せるなら個人事業よりも株式会社の方が安心」
と考えるお客様が多いことも否定できません。
「会社」の方が信用がおける(とお客様が考えてくださる)かどうかは、業種によって変わりますので、個別に検討すべきです。
では、あなたの会社設立の目的は何ですか?
会社の形を決める、もう一つの大切な視点。
あなたは何を目的に会社を設立するのでしょうか?
会社にして、事業をどうしていきたいですか?
一般的なメリットデメリットだけをみて、「あなた自身がどうしたい」、ということを考えるのを忘れていませんか?
実は司法書士は、会社設立をするとすでに決めたお客様から依頼を受けますので、この部分に関わることは少ないように思います。
けれど多くの会社設立のお手伝いをさせていただくうちに、ご自身の想いと向き合って、「事業をどうしていきたいか」を深く掘り下げることで、事業の指針ができ、その後の覚悟ができるのではないかと考えるようになりました。
また、なにより私自身がお客様からそのようなお話を聴くことがとても好きなんですね。
やりたいことがはっきり決まっている方とお話をするのは、一緒に夢を見ているようでとても楽しいです^ ^
事業の未来を描けば、株式会社と合同会社で迷わない
前回の記事でもふれたように、会社は、どのような目的を持つかで、コピーロボットにも、バスにも、船にもなります。
もう少しわかりやすくイメージしていただくために例えるとこんな感じでしょうか。
一人株主=一人社長 → コピーロボット
家族経営会社(いわゆる、三ちゃん会社) → 車
中小企業 → バス
大企業 → 船
本来、商法はバスや船型の会社を想定した法律でした。
ところが実際には車型の会社ものすごく多かった。
車の形をしていたけど、中身はコピーロボット、つまり実質社長一人で会社を切り盛りしていることもありました。
船やバス用のルールを、車にそのまま使うことで不都合も多く、しかも現代の実態に伴わない。
取締役3名以上は必要だったから、登記するためだけの、名ばかりの取締役や監査役もたくさんあったし、船用の株主総会のルールは、車の会社には厳格すぎたんです。
ということで、平成18年の商法大改正に至ります。
商法から会社のルール部分が切り離されて、会社法が成立しました。
そこで初めて、制度上コピーロボット型の会社が認められるようになりました。
つまり、役員が代表取締役一人(=株主)だけ、という会社です。
そして同じ株式会社でも、形態によって、適用されるルールが変わります。
しかも、制限はありますが、その会社独自のルールも導入することができるようになりました。
コピーロボットや車であれば、社長個人や家族の利益を優先したルールを作ることができます。
だけどバスや船型の会社では、役員、株主、従業員、取引先などその会社に関わる人が多くなるため、より社会的な存在になります。
そうすると、経営陣の利益のためだけのルールを作るわけにはいきません。
そして、よりコピーロボット型の会社に適しているのが、合同会社。
一般的な知名度はまだまだ低いように思いますが、徐々に選択する方も増えています。
(それに実は、名だたる大企業も合同会社を選択しているところがあります。おそらく制度上は予想外のことだったと思います。)
合同会社はもともとコピーロボット型の会社を想定した形態なので、内部自治の範囲が株式会社より大きいのです。
ですから、どのような事業をしていきたいか、どんな組織を理想とするかをはっきりさせることで、株式会社と合同会社、もしくは一般社団法人などの各種法人、どれを選ぶべきかの基準がわかります。
どんな定款を作ればいいか、考えることができます。
次回は会社と法人の違いと考え方をお伝えしますね。
個人事業から会社設立を検討している方向けシリーズ
【個人事業から会社設立を検討している方向け】①会社にするってどういうことだろう?
【個人事業から会社設立を検討している方向け】②会社設立の目的を考える~よくある3つの目的と、会社の形を決めるもう一つの大切な視点。
【個人事業から会社設立を検討している方向け】③会社と法人、どちらを選ぶ?
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