「生まれ育った環境に関係なく子どもたちが夢を持ち人生を切り拓ける世界をつくるため、すべての子ども達に移動映画館で映画を届ける」
この本は、そんな活動を続けられているWorld Theater Projectの代表、教来石小織さんの著書です。
日本に生まれたというだけで、生まれながらに多くの選択肢があって、夢をもてばそれを叶える道を選ぶことができます。
世界に目を向ければ、それがあたりまえではありません。
ある国では、子どもたちの夢は「先生」か「医者」ばかり。
また、「大人になること」が夢だと答える子もいるそうです。
夢をもつことすら、想像できない子どもがいます。
知らない夢は、描けないのです。
偶然出会ったこの本のおかげで、「夢」について、考えるきっかけになりました。
「何かになりたい」よりも、「何かがしたい」という想い
保育園のとき絵に描いた将来の夢を、ふと思い出すことがあります。
マイクをもって華やかなステージに立つアイドル。
色とりどりの花に囲まれたお花屋さん。
小学校の時は漫画を描くのが好きで、漫画家になりたかった。
中学校の時は洋裁が好きで、それを学べる遠くの高校に行きたかった。
(両親と先生の反対にあい、断念。)
そのあとは、夢らしき夢ってとくにありませんでした。
勉強をしていれば、大学にいけば、なにかになれるらしいと思っていました。
そんな私が司法書士になったのは、成り行きが8割だと思っていますが、、、
この仕事、というより「私のやり方でできるこの仕事」がとても好きです。
今思えば、「何になるかより、何をしたいかという想い」が大事なんですよね。
それこそが、すべての原動力になります。
著者の教来石さんがカンボジアに映画館を作りたいと思ったのは、30歳をすぎてからでした。
それまでの彼女の経験や体験があったからこその、その想い。
強くてぶれないその想いが、形になっていったのですね。
大人になってからの夢って、子供のような「何かになりたい」ではなくて、「何かをしたい」というようなものだと思います。
「何かになった」ところがゴールではなくて、当然その先があるからです。
やりたいことって、なんだろう。
自分がしたいことを、ちゃんと自覚するということ。
「やりたいこと」や「理想」「夢」っていうと、なにか壮大なもののようにも思えるけど、おおげさなものじゃなくてもいい、こうしたい、こんな自分になりたい。
そういうものを環境のせいにしてあきらめたりせずに、ちゃんとその気持ちと向き合ってみると、毎日の過ごし方も、日々の小さな選択も、見える景色も少しずつ変わっていくように思います。
例えば私は、
ちゃんとご飯を作って食べたい。
いつも片付いた部屋で過ごしたい。
ちゃんと家事をしたい。
もちろん仕事も手抜きせず続けたい。
でも子どもと過ごす時間も確保したい。
いつもご機嫌でいたい。
そんな生活の理想があったのですが、この気持ちにすら向き合えなかったときは、
仕事で遅くなるから料理がおろそかでもしょうがない。
子どもが小さいからいつも部屋がおもちゃだらけでも仕方ない。
家事の仕方なんて教わってないからわからない。
仕事は優先してやるべきだから帰りが遅くても、子どもと過ごす時間が短くてもしょうがない。
イライラして家族にあたっちゃうのもしょうがない。
言い訳をいくつも並べて、あきらめていました。
本当は、ちゃんとしたいのに。
でも別に、全部言い訳してやらない理由をさがしていただけで、できる方法を考えようともしなかっただけだったんです。
料理や掃除に時間がかかるなら、簡単にできる仕組みを考えればいい。
仕事が回らないなら、人を増やして頼めばいい。
子どもとの時間を確保する方法を考えればいい。
イライラが少なくなるように、考え方を変えたり工夫すればいい。
理想があっても今は無理と決めつけて、やらない理由を探すクセは、なかなか変えられないもの。
毎日のちょっとした「こうなりたい」という気持ちを大切にしていくと、「あれもできるしこれもできる」ということに気づけるのです。
行動するということ。
教来石さんは思い立ってからカンボジアに縁がありそうな場所にでかけ、その場で声をかけ続けていきました。
「カンボジアに映画館をつくりたい」と。
そして数ヶ月後には、カンボジアで第1回目の映画上映。
今でこそ形になっているように見えますが、当時の、ゼロからの状況を考えたらものすごい行動力です。
しかもどちらかというとかなり消極的な性格でもあったそう。
「何かをしたい」と思ったら、どんなに遠い道のりでも最初の一歩があって、行動力は必須。
そのとき、できることを、やれるだけやる。
開業当時、25歳のころの私を思い出します。
今思えば無謀で大胆で、行き当たりばったりの開業でした。
お金も、ツテもなくて。
でもあのころの内側から溢れ出るようなパワーのおかげで、だんだん形になっていったのだと思います。
今はあのころのような身軽さはなくて、ちょっとだけ大人になったぶん、変に慎重になってしまったようなところがあります。
この本には、そんな自分に喝を入れられた気分です。
人を巻き込むということ。
一見無理そうなことを成し遂げたいと思ったら、一人でできることはいずれ限界がきます。
自分と同じ人は絶対にいなくて、自分と違うだれかと、同じ目的や夢を共有すると一気に近づく。
恵事務所は豊川から田原に事務所移転して8ヶ月ですが、豊川にいたころの私は、事務員はいたものの、何をするにも自分一人で決め、人に任せられないからと自分で動いて、いつも私だけ忙しくしていました。
当然、家のこともままならず、家族に対しても毎日罪悪感でいっぱいで。
家庭や子どもを犠牲にして自由に仕事をさせてもらっているという負い目のようなものもあったから、とにかく苦しかった。
自分のコピー人間が欲しいとまで思っていました。
田原に事務所移転を決めたとき、もっと自分を時間的にも精神的にも自由にしたくて、パート事務員を増やし、自分しかできないと思い込んでいた仕事をどんどん任せました。
そうしたら、今では二人の事務員でほぼ仕事を回せるようになり、私は最終チェック係に。
心も体も軽くなって、急なアポイントにも対応できるし、家族との時間にも余裕ができていいことづくめでした。
著者の教来石さんも、いろんな人の助けを借りて、上手にお願いし、任せ、組織を作っていったのだと思います。
きっと、彼女も一人ではできなかった。
私こんなことしたいんだ、こんなふうになりたいんだとだれかに伝えたら、一緒に方法を考えてくれたり、手を貸してくれる人は、います。
「遠慮せず、任せて、できる人に頼る」
上手に人を巻き込むには、上手に人に伝えることも大事ですね。
「やりたいことを自覚する」「行動する」「人を巻き込む」
夢ややりたいことを叶えるにはこの3つが不可欠だと思うのですが、きっかけは、「やりたいことを自覚する」だと思います。
例えばお金がないから、子供がちいさいから、家族の協力が得られないから、もう若くないからと、やりたいことや夢をなかったことにし続けていると、気付いた時には「私何がしたかったんだっけ?」「やりたいことがない!」となりがちです。
そして、やりたいことや夢がはっきりしていないと、何がしたいのかわからなくなって「行動し続けられない」「人に伝えられない」から「人に頼めない」んです。
難しいけど、そこに気づくとシンプルでもあります。
私はこれをやりたいから、こういうことが必要、あなたのこんな力が必要、と具体的な道筋をたてることができるから。
大人になっても夢や理想を持ち、今自分がどんな環境にあってもやりたいことをして生きていく。
それは決して楽なことばかりではないけれど。
それが、「自分の人生を生きる」ということなのかな…そんな風に思えた一冊です。
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